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2026年9月5日土曜日
近所および少し遠い処 花と夢 Ⅸ 高山れおな
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近所および少し遠い処
花と夢 Ⅸ
高山れおな
揺れやすし真夏の夢のさるすべり
炎昼の肌みな若しさるすべり
ペンタスの白星屑の白に紛れ
路地凡
(およ)
そペチュニア銀座なる静寂
(しじま)
風知草果たして水も打つてある
地は裂くるとも箒木や煙
(けぶ)
るべし
おしろいや幼な恋よりおさなくて
牛ケ淵
蓮揺れて秋日に白き腹も見す
アベリアの繁
(しじ)
の照葉や残暑光
芸の無い句を採る芸や秋寒し
2026年8月6日木曜日
モーム氏の感想 花と夢 Ⅷ 高山れおな
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モーム氏の感想 花と夢 Ⅷ 高山れおな
大暑なり木槿が夢を見始めて
紫陽花は崩
(く)
え七変化
(ランタナ)
は玉かかげ
七変化
(ランタナ)
や暗き車窓の次々過ぐ
水無月の黄のとめどなく苦瓜
(ゴーヤ)
咲く
俯いて赤
キ
裸のこころ鹿の子百合
陽が灼くと地に沸く紅黄草
(マリーゴールド)
よ
茂より眩しさの白さるすべり
四月より大磯鴫立庵連句会の末席に連なる。
八月、正式に連中に加へらる。
蟬しぐれ歌仙の恋に染みよかし
最初の連句会で咄嗟に号を「蒙夢」としたが、
じつはモームを一冊も読んでゐなかつた。
寝覚めが悪いので読み始めると、もう止まらない。
要約すると
(サミング・アップ)
旅して書いて仏桑花
空耳のやくざ医師笑む晩夏光
2026年7月13日月曜日
花と異稿 Ⅱ 高山れおな
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花と異稿 Ⅱ 高山れおな
靨
(ゑくぼ)
あり海芋の白を帯びて笑む
多摩市一ノ宮・小野神社
地に着いて茅の輪や武蔵一の宮
風過ぎてアガパンサスは残りけり
うちつけにアベリア甘き夏の闇
六月二十一日、竹岡一郎忌
はれときどき苗そして笛しかも夏至
梅雨晴間アメリカフウは緑
(あを)
透きて
河童忌や普通に無限に阿洲鳳仙花
(インパチェンス)
「歌仙 曼荼羅の巻」異稿
秋風や米に名のある国に来て
同前
冬の灯や背取の指が伸びるとき
同前(短句)
一天高く城ありし山
2026年6月1日月曜日
花と異稿 高山れおな
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花と異稿 高山れおな
十薬や月日数へるとき暗む
アベリアの花繞
(めぐ)
らせて衆愚棲む
年下で老眼の友青あらし
ぎしぎしがぎしぎし眩暈
(めまひ)
の国は此処
「歌仙 花に浮かれの巻」異稿
燗酒に涙流して笑ふ夜ぞ
同前
雪女眼は燃えながら風のむた
同前(短句)
夏炉見つめてをれば茫々
六百番歌合恋題再制作、「顕恋」異稿
夏痩と言ひ做
(な)
しけるは恋の錆
「旧恋」異稿
歌がるた古き遊びの永久
(とは)
の恋
「老恋」異稿
命短し恋せよ翁忌の翁
2026年5月1日金曜日
花と夢 Ⅶ 高山れおな
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花と夢 Ⅶ 高山れおな
三月三日、つげ義春先生が八十八歳で亡くなられた。私自身は愛読者を名乗れる程の者ではない。ただ、二〇一三年に、山下裕二氏と編集部の先輩Yの驥尾に付してお目にかかる機会があつた。取材は受けないと事前に断られてゐたが、一通りのご挨拶が済むといきなりあれこれ話し出された。山下氏にはもとより心を許してゐたのに加えて、Yが作品を深く読み込んでゐるのを感じて興が乗つたのだろうか。取材ではないといふ建前だから録音機は回せなかつたけれど、それはまさにインタヴューで聞きたいやうな内容だつたから、私は一時間か二時間の間、書記に徹してペンを走らせ続けた。そのメモを起こしたものがもとになつて、かなり久しぶりの新規のインタヴュー記事がメディアに出ることになつたのだつた(「芸術新潮」二〇一四年一月号「大特集 デビュー60周年 つげ義春 マンガ表現の開拓者」)。
逃げ水の向かうつげ義春の春
花の雨に紛れぬものは松の芯
相模野や桜敷きつめフリージア
三椏が咲き盛
(さか)
る陰謀の巣か
花束のラナンキュラスが愛の渦
チューリップ狂へる如き明るさに
つつじ燃え暗き骨格隠したり
鮟鱇の顔夢を過ぎ傘雨の忌
一家みな口から生まれ更衣
志す富士見えてくる夏模様
2026年4月1日水曜日
夢の庭 高山れおな
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夢の庭 高山れおな
いつの世のことかこの庭を造ったのは。
西脇順三郎「冬の日」
西芳寺 三句
春光の緯
(よこいと)
通す雨の庭
苔厚く着て佐保姫の眠りなほ
冴え返るここ夢の庭夢の世に
沈丁花生死の生の側に嗅ぐ
黄玉
(トパーズ)
を巻ける紅玉
(ルビー)
や花しどみ
白象
(びやくざう)
の雲の群ゆくヒヤシンス
うつむけばあり面影が花韮が
雪柳かく揺れやすく若ざかり
利休梅昼深きより春のゆめ
口あいて君もバラ科か薔薇のジャム
2026年3月1日日曜日
丙午麗日 高山れおな
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丙午麗日 高山れおな
うららはたきらら天卵怪の絵は
ノックあり又ありヴァレンタインの日
紅梅に風も光らむ今は無風
紅梅や心化粧の笑みをちこち
かんがへるしづかさかはづざくらかな
別所真紀子さんより「紅玉(ルビ)」の語を詠み込みたる祝句を賜る、返し
葉隠れの幾百千鳥紅玉
(ルビ)
こぼす
果てしなく鈴振るものは春の星
雛壇のみな鬼太郎の父のこゑ
囀れるうしろ姿や光悦忌
〈吊革にぶらさがりてもうららかや〉山口青邨
広告や家と結婚うららかに
2026年2月1日日曜日
冬の日 Ⅱ 高山れおな
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冬の日 Ⅱ 高山れおな
結婚はツヴァイつはぶき瞠
(みは)
る花
裸木や魔の指
(および)
もて天を摩す
夢のごと橙の黄や鳴かず照る
太箸の精兵
(せいびやう)
といふ食べつぷり
浪々の果てに弾けて花八つ手
居様
(ゐざま)
よき人とましろき室咲と
寒月へ征く人の無き道真直ぐ
さうさうと風の総譜
(スコア)
や寒椿
賢なるかな回や。
冬星の中の一つの陋巷に
タムス耳鼻科西葛西駅前
季語かは微妙鼻の薬の吸入器
CASSANDRA 高山れおな
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二〇二五年一一月分遅配
CASSANDRA 高山れおな
馬鹿の壁馬鹿の屋根乗せ初明り
どこでも行ける初髪も見ず初電車
まさみ結婚白富士に風あるが見え
ラガー一騎泡嚙む早馬
(はゆま)
のごと抜けて
湿つて冷
(つめ)
たカツサンドはたカサンドラ
映像に鼠賊
(そぞく)
の君や着膨れて
日矢に舞ふさはれ冬蠅の装飾楽句
(カデンツァ)
雪女文盲にして不遜なる
三寒の河口かがやく国境
地に跳ねて何も残さず寒鴉
(かんあ)
去る
2026年1月3日土曜日
丙午新春並びに雑観 高山れおな
二〇二五年一〇月分遅配
丙午
(へいご)
新春並びに雑観 高山れおな
二〇二六年丙午新春 六句
初風やいづれ優駿ならぬなく
乗初の馬上豊かに会釈あり
我が本卦は戊申。還暦、二年後に迫る。
立ちつ居つ馬の守りの猿の年
元日は。
独り来て十三夜月と初詣
二日、都内初雪。二句
初雪の声なき声や夜を覆ふ
人を消す遊び狗日
(くじつ)
の雪として
鬼柚子か誰の秋思か香に匂ふ
金柑の金降る夢の果てに逢はむ
豈六十八号掲出句改作
猛残暑ロミオ洋品店跡更地
二〇二五・六更新「独逸四重奏曲」七句目差換
放心の口へ独逸熱狗
(ジャーマン・ドッグ)
夏至
2026年1月1日木曜日
冬の日 高山れおな
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冬の日 高山れおな
よき友三つあり。一つには物くるる友。
からすみの金赤届く十二月
コンビニで惚け食らふも日向ぼこ
茨城県日立市で私は生まれたのだが、ここに来たのは
祖父の葬儀以来、かれこれ三十五年ぶりくらいか。
寒暮長鳴き常磐線の灯が北へ
今回は伯母の葬儀。小学校の夏休み毎に弟と一緒に
伯母の処へ行つた。思ふことは多いが今は略す。
顔白く小さく遠く帰り花
冬至湯の設けはなくて熱し明し
おもしろき仕事納の夜を別る
煤なんて出ませんがな。
日がな大掃除煤掃きには非ず
青天や妻と約せし畳替へ
幽明の境なく晴れ裕明忌
行く年を追ふスーパーの碁盤の目
2025年12月1日月曜日
花と夢 Ⅴ 高山れおな
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花と夢 Ⅴ 高山れおな
錦木や猫の額が見えてくる
命なりはららご溢れピラカンサ
黒鉄黐
(くろがねもち)
の実ほど赤いか鉄鼠
(てつそ)
の眼
春のゆめ黄葉
ヂ
にこめて花蘇芳
百合の木の黄葉輝きつつ冬へ
言霊の香を聞けば柊の花
冬蝶や青信号の行きどころ
濛々とおとがひ剃るや小六月
冬霞さまよふ安全剃刀他
特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」再見、
東京国立博物館本館特別五室
冬めくや運慶を見て夜の雲
2025年9月1日月曜日
花と夢 Ⅳ 高山れおな
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花と夢 Ⅳ 高山れおな
莞爾
(につこり)
と汗のタトゥーや羽搏てる
秋の蟬指環の如き殻残す
風穴のない葉ある葉や紅芙蓉
秋蝶の影ランタナの彩
(あや)
に落つ
禁煙も二百十日やハムサンド
葵さん、文庫編集部に異動。最後に担当したのは「しゃばけ」特集。
送別会の幹事より、花束に添へるカード用の句を徴さる。二句
娑婆いつも青い青いはきちかうよ
手文庫に月明の文字泳ぎ出す
香
(かざ)
暗き松風草を鹿は啖はず
きちきちが飛び交ふ向かうきつと罠だ
水犀や珊瑚樹の火を分けて出よ
2025年8月4日月曜日
花と夢 Ⅲ 高山れおな
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花と夢 Ⅲ 高山れおな
著莪を見ぬ年ありき思へば翡色
(ひしよく)
一即一切老爺的陰嚢
(おほぢがふぐり)
が破れたよ
青火花夏は台湾連翹
(デュランタ)
・瑠璃茉莉
(プルンバゴ)
ながしめの互ひに浮釣木
(うきつりぼく)
の花
佐藤りえ句集『兎森縁起』
どこまでも兎が星を売る夜店
牛ケ淵越しに北の丸を望む。三句
濠埋めて物思
(ものも)
ふみどり蓮のみどり
はちす葉に鯉や仮面や隠れ泳ぐ
蟬の迷宮見つけて御覧御名御璽
またここに青天白日百日紅
『マクベス』イエローヘルメッツ公演
手拍子
(クラップ)
のこれより乱世夏芝居
2025年7月3日木曜日
花と夢 Ⅱ 高山れおな
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花と夢 Ⅱ 高山れおな
原爆の図丸木美術館
雨白く武蔵大国栗の花
珊瑚樹の茂りいよいよ花は星
繡線菊
(しもつけ)
と夢の裸やあいまいに
花の木の泰山木へ帰る円舞曲
(ワルツ)
螢袋や舌出す池田澄子の庭
夕風のアガパンサスや波に乗る
江東運転免許試験場
証明写真日日草のごとく写れ
吹かれ来てここよりの海冷やし酒
中西悠一君・髙山有実子結婚 二句
有りの実へ行く薫風の悠かなる
有りの実二つになる夏の夜の夢悠々
2025年6月2日月曜日
独逸四重奏曲 高山れおな
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独逸四重奏曲 高山れおな
恍惚と新玉葱や刃を濡らす
茹で潰す新じやがの雲笑ふ笑ふ
古裂帖に隠花帝国の夏を探す
俳魔の顔おほよそ独逸菖蒲
(ジャーマンアイリス)
か
独逸牧羊犬
(ジャーマンシェパード)
薫風を嗅ぎ星を嗅ぐ
蜘蛛の囲や独逸卵焼
(ジャーマンオムレツ)
ほど静か
かたばみを踏まずに行かう独逸まで
髄菜咲くとは白き指夢に満ち
一切経蔵いやさ鏡像草いきれ
夕焼や父系天使の大系図
2025年5月11日日曜日
花と夢 高山れおな
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花と夢 高山れおな
春落葉操る指揮棒
(タクト)
なら貰ふ
夢残る路地の朝靄金盞花
田楽の次も田楽昼深し
喜見城徹だんだん透けて叫ぶ
紫蘭より顔上げ何もかも見ゆる
都営住宅と野ばらと陽と仲良し
行けば逢へる紅花栃の木咲く夢を
白丁花ひとの垣根の白い時間
葉桜や夕映えの窓怖ろしき
尋ね来よ雲と木香薔薇の家
2025年4月4日金曜日
阿吽 高山れおな
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阿吽 高山れおな
大阪市立科学館
天象儀
(プラネタリウム)
出でて春愁とも違ふ
道頓堀
愚かなる看板楽し春寒し
大阪城
啓蟄や此処になにはの夢の城
ちんどん通信社
東西屋蜷の道ほどくねり行く
難波橋 二句
橋護る阿吽の獅子や春の水
春光の石に刻みてなにはばし
大阪メトロ堺筋線
天下茶屋暮れなづむ空ありにけり
大阪市中央公会堂特別室天井画
拙にしてうららか雲と神々と
新世界 二句
春の道またぐ通天閣の春
亀鳴いてゐてビリケンの糸目なる
2025年3月31日月曜日
上をさらに上を 高山れおな
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二月分遅配
上をさらに上を 高山れおな
牡丹雪上
ハ
の空なるところより
昼灯す町なつかしや木の芽雨
南海電気鉄道難波駅
翼有る車輪が記章春の朝
法善寺水掛不動
永き日や苔被
(かづ)
きたる不動尊
法善寺横丁、又の日
夫婦善哉味は普通でさくら時
忌日法要ののち旬日、常国寺なる
梶井基次郎の墓前に檸檬あまた。
陽炎へり墓も檸檬も文学も
高津宮は仁徳天皇の皇居址と伝ふ。
花の塵交響曲第41番
(ジュピター)
のごと舞ひ上がる
生國魂神社は西鶴「生玉万句」の故地なり。
行きて帰らず万句興行も春も
東福寺懐旧
上をさらに上を大涅槃図の日と月は
明るさや桜に伍して花蘇芳
2025年2月28日金曜日
お骨柄 高山れおな
三月分遅配
お骨柄 高山れおな
又の日、大阪
春光やダイヤ乱れて旅にあり
天地大戯場商都の朝桜
大阪市立自然史博物館ポーチ、鯨類骨格標本
霾天を翔んでいさなのお骨柄
お初天神
神祀るビルの谷間や鳥の恋
曾根崎
夕東風に鯛焼食うて独りかな
梅田地下街
春の灯や蜘蛛手に満ちて虚
(うろ)
の街
大阪駅前第1ビル
虚子忌二日後なりマヅラ喫茶店
大阪天満宮
広前を寄席へ抜くるや春の土
阿部野神社
北畠顕家死処のゆきやなぎ
これは東京
春陰のここに降り立ち普賢象
*フゲンゾウはサトザクラの一種。
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