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あやかちやん 佐藤文香
をばちやんはあやかちやんなり夏休
朝蟬凄まじ低山を削ぐごとし
かき氷機と自転車持つて来たといふ
鼻筋の白に傷ある夏の馬
従妹の子等や従弟がプールへ連れて行き
炎帝は馬のはだへに身を任す
かぶとむし用ゼリーを食ひにごきかぶり
祖父駅長時代の夏のネクタイよ
ねむつたな今日は手花火をあきらめて
父の実家は我にも実家いりこの香
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停電 関悦史
革命無く毒針に充ち蜂世界
都庁四十八億円の投影涼し餓ゑの中
昼寝覚天井に手形にじみ出づ
巨石その苔の中から歯朶若葉
訃報あと鋸を万緑に入れ
白熱の都心に恃む日傘かな
新刊蒼く灼けて四十年(よそとせ)なほ売物
停電に未保存稿の消え遠雷
関東をしづかに海が吞む劫暑
原発を揺らしてみるや八月も