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黒 関悦史
大気切り出すセザンヌが春の山
ガザにヒトの文明砕けし子猫二匹
マグカップから寄居虫の出る晩年
暗黒に成りてより観る桜かな
轟音の脳血管に春の月
よなぐもり袖の釦の行方かな
独我論の黒球を割り春の草
日本かつて晴着にさんざめき入社式
入社式ファシズム黒(ぐろ)のいま粛と
なめらかなチーズとその黴 敵は無限
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百題稽古差換ノ三 高山れおな
虫
昼の虫だらだらまつり抜けてより
暁
狂ほしくいま有明の花や鳥
松
大手門くゞるや緑立つ空虚(ヌル)へ
山
赤城に月の高踏派(パルナシアン)はむさゝびか
関
来るな来るなの勿来(なこそ)の関も霾れる
橋
みな渡る世を宇治橋の秋暑し
別
会ふは別れ星に花韮白きゆふべ
春日
好きなものうらゝなる日と達磨歌
元日
昭和百年のあらたまあらみたま
賭弓
賭弓(のりゆみ)や刺さりて止むは言の葉も
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気付き・忘れ 佐藤文香
ドライポイントのいきものたちの春
チューリップ気張れば元気出て驚く
面影の小つぶとなりぬぶらじる丸
春風や寝袋のなかふかみどり
鉄粉が磁力を見せる桜の夜
草餅の餡は夜空を想ひけり
砂も息ができる浅蜊に吐かれれば
己が巣に至り燕の赤き顎
うどん屋のそとは雨なり暮の春
紫陽花の若葉に気付き忘れけり