2024年5月1日水曜日

061*2024.5




10句
黒    関悦史

10句

10句

黒      関悦史



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黒    関悦史 

大気切り出すセザンヌが春の山 
ガザにヒトの文明砕けし子猫二匹
マグカップから寄居虫の出る晩年
暗黒に成りてより観る桜かな
轟音の脳血管に春の月
よなぐもり袖の釦の行方かな
独我論の黒球を割り春の草
日本かつて晴着にさんざめき入社式
入社式ファシズム黒(ぐろ)のいま粛と
なめらかなチーズとその黴 敵は無限

百題稽古差換ノ三  高山れおな



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百題稽古差換ノ三  高山れおな

    
昼の虫だらだらまつり抜けてより
   暁 
狂ほしくいま有明の花や鳥
   松 
大手門くゞるや緑立つ空虚(ヌル)
    
赤城に月の高踏派(パルナシアン)はむさゝびか
   関 
来るな来るなの勿来(なこそ)の関も霾れる
    
みな渡る世を宇治橋の秋暑し
    
会ふは別れ星に花韮白きゆふべ 
  春日 
好きなものうらゝなる日と達磨歌
  元日  
昭和百年のあらたまあらみたま
  賭弓 
賭弓(のりゆみ)や刺さりて止むは言の葉も

気付き・忘れ      佐藤文香

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気付き・忘れ      佐藤文香

ドライポイントのいきものたちの春
チューリップ気張れば元気出て驚く
面影の小つぶとなりぬぶらじる丸
春風や寝袋のなかふかみどり
鉄粉が磁力を見せる桜の夜
草餅の餡は夜空を想ひけり
砂も息ができる浅蜊に吐かれれば
己が巣に至り燕の赤き顎
うどん屋のそとは雨なり暮の春
紫陽花の若葉に気付き忘れけり