2019年11月17日日曜日

007*2019.11


イラストレーション 関悦史
デザイン みけん

作品
▶︎淡海  関悦史

作品
▶︎片恋/帰れる  佐藤文香

散文
▶︎日記(2019.10.15~10.31)  関悦史

散文
▶︎星とは何か  佐藤文香

おしらせ1
「翻車魚」3号(ふくろふ号)特集・関悦史 出ました!

おしらせ2
翻車魚は 11/24 第29回文学フリマ東京に参加します。(テー02)

おしらせ3
11/16~12/2 Title展示「句の景色」に、翻車魚メンバーが参加します。

おしらせ4
12/7 現代俳句協会青年部 第163回勉強会「柿本多映俳句集成を読む」
(『柿本多映俳句集成』編集に携わった関・佐藤も聴きに行きます)

星とは何か   佐藤文香

貴女がある星を指差すとして、その人差指の指紋が、指紋と地面とのあいだに存在する空気の一番上の部分を圧していることは、その人差指が、爪の先から星までを埋める空気の斜め下の部分を突いていることよりも、客観的に見てドラマチックでない事象なのだが、私の主観からいわせてもらえば、うん、土竜という生き物として暮らす私の主観ではあるが、私の未だ見ぬ、星と呼ばれる何かのために私が貴女の圧力を得られるということで、圧すといっても触る程度のことではございましょうけれど、私はまず貴女の立つ真下へ土の中を駆け、やさしい靴音に怯えながらも、我が身を覆う土の上部の空気が、貴女の指紋に動かされることを、心待ちにするのであります。という点から、貴女の人差指が爪の先から星までを埋める空気の斜め下の部分を突いていることよりも人差指の指紋が指紋と地面とのあいだに存在する空気の一番上の部分を圧していることの方が大変にドラマチックで愛しい事象なのである。

いつか星を、その星と呼ばれる何かを、貴女、貴女の指紋に掬い取って、星を付けた人差指で、足元のしめった土をほじくって、私を、そうさ土竜の私を、探してくれまいか。私の、冷えて細い桃色の鼻先に、星というものやそれが輝く夜という雰囲気を、一寸与えてくれはしまいか。貴女の指紋が直に私の鼻先を押して、私の豚に似た鼻先に星がプリントされる、さすれば貴女の指先から何かへの、すべての距離の幅だけある空気たちのことを、貴女も私も考えないでよいときがくる。そうして私は、星とは何かを、貴女に教わることになる。そんなことまでも私は、心待ちにしているのであります。

日記(2019.10.15~10.31)  関悦史

10月15日(火)
  注意力低下がひどい。
 勉強会、原稿等についての連絡立て込む。
 栗本薫『緑の戦士』『町』、横田順彌『星影の伝説』、栗本薫『さらば銀河1』読了。 

10月16日(水) 
 遅れていた「翻車魚ウェブ」用の日記をようやく送稿。
 竹岡一郎さんとメール。あちらは台風の影響はなくて済んだらしい。
 書評を依頼された石川九楊『河東碧梧桐―表現の永続革命』やっと読了。

10月17日(木) 
 睡眠ズタズタ。
 石川九楊『河東碧梧桐―表現の永続革命』の書評を書き、東京新聞に送る。
 半村良『黄金奉行』読了。

 10月18日(金)
 「俳句の日めくりカレンダー」2020年版(拙句が収録されたもの)他、雑誌類届く。
 疲れ。
 「俳句四季」の撮影日程の件で電話が来る。

 10月19日(土)
 吉本隆明『戦後詩史論』、松本清張『異変街道(上・下)』、西村京太郎『南伊豆高原殺人事件』読了。

 10月20日(日)
 半村良『江戸群盗伝』、五木寛之『スペインの墓標』読了。
 「翻車魚」3号のゲラ来る。
 買い物に出られず。日が暮れてから洗濯。
 区費の集金が来たので来年3月までの未払い分計5,500円支払う。4月分だけ払ってあった。
 肩凝り、貧血様の気持ち悪さ。
 松本清張『鬼火の町』読了。

 10月21日(月)
 柴田元幸・沼野充義・藤井省三・四方田犬彦編『世界は村上春樹をどう読むか』読了。
 吾妻ひでおの訃報。
 食料買い出し。
 「俳句四季」の件で、山崎祐子さんに「かすみ人形」の写真提供願いのメールを出す。自分のデジカメではうまく撮れなかった。夜、山崎さんから画像一山来る。
 NHK文化センターにメールし、自分の講座の日程を変更してもらえたので、現代俳句協会青年部に《勉強会「柿本多映俳句集成を読む」参加申込》のメール。
 「翻車魚」3号、「円座」、東京新聞書評のゲラを済ませる。
 不眠。
 台風様の雨風。

 10月22日(火)
 雨風強い。
 不眠疲れひどく、歯医者に電話して予約を変更。
 西村京太郎『無明剣、走る』読了。 10月23日(水) 
 半村良『産霊山秘録』三十数年ぶりで再読。
 朝、脇の道に張り出していた枝を切り、ゴミ出し。
 鼻風邪、熱、頭痛。
 毎栄の添削を済ませて投函。
 図書館へ。年鑑原稿用の資料を数点借りる。

 10月24日(木)
 珍しく夜眠れたが、低気圧のせいか気持ち悪くて苛々。
 某社から原稿料の振込で手違いがあったとメール。
 ブログに最近の句集をまとめて上げる。
 YouTubeでクラシック動画を漁って時間を潰してしまう。

 10月25日(金)
 西村京太郎『十津川警部 トリアージ 生死を分けた石見銀山』、エドワード・W・サイード『人文学と批評の使命―デモクラシーのために』読了。古いものばかり読んでいた西村京太郎、近作は読点が無闇に増えていて驚く。
 諸連絡立て込む。
 昼間寝ていたが大雨による避難勧告(?)が携帯に来て覚醒。
 青木亮人さんのツイート、青木さんも石川九楊『河東碧梧桐』の書評を日経新聞に書いたらしい。
 10月26日(土)
 神田古本まつりに小野村と行く予定だったが双方不調で中止。
 土浦花火大会が始まっても、音を聴くばかりで見にも行けず。桜川河川敷の無料席が大雨で水没していたが、花火大会は決行された。

 10月27日(日)
 水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』、飯島裕子・ビッグイシュー基金『ルポ 若者ホームレス』読了。
 毎栄の添削を投函。
 土浦駅で「俳句四季」西井さんと合流。その辺で写真を撮られる。
 図書館と古本屋を見て帰る。古本2点、横溝正史『真珠塔・獣人魔島』、フリッツ・ライバー『妻という名の魔女たち』購入。
 諸連絡。

 10月28日(月)
 横溝正史『真珠塔・獣人魔島』、神野紗希『もう泣かない電気毛布は裏切らない』読了。
 深夜、食料買い出し。
 句集、雑誌等大量に届く。
 腹の不具合いつまでも続く。

 10月29日(火)
 朝、共同通信の時評を書いて送稿。
 夕方仮眠。既に他人が入っている下宿にまだ荷物が残してある夢。

 10月30日(水)
  古本でコリン・ウィルソンを読む夢。
 腹重く、背凝り、息入らず。  
 「俳句界」からメールでゲラ。  
 蓮實重彦『映画時評 2009-2011』読了。

 10月31日(木)
 首里城消失の報。
 普段閉めきっている二階東側の雨戸が開かなくなってしまった。台風19号で戸袋内のベニヤが剥がれて膨れ上がったらしい。
 和田誠・三谷幸喜『それはまた別の話』のみようやく読了。       

*  11月分の日記は別メディアに掲載されるため、今回はここまで。

2019年11月1日金曜日

淡海    関悦史

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  淡海        関悦史  
  
 琵琶湖 三句
淡海秋暑ゆるされゐしは白と青
生の時間秋の淡海まで来たり
秋の石座すや我ごと転がりぬ    
 台風十九号 三句 
台風前日スーパー全レジ静けき列
大震災の記憶と明日来る台風
台風猛烈ベートーヴェンを聴き通す
雨後の冷え竜の刺身の如くにて
梟のゐる界面を眠るかな
マンガ絵の巨乳捕縛すや一休忌
白梟ふとスケキヨの貌したり

片恋/帰れる    佐藤文香

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 片恋/帰れる   佐藤文香

洋梨と窒素ふれ合ひゐたりけり
髪切つて髪のおほさや渡り鳥
  秋まつり紐のないイヤフォンで行く
片恋に脳の凝るなり芋の露
街道を霧のまなこの歩みける
  岸の厚みに紫陽花の枯れ暮し
指を頬から耳から髪へまた落葉
月南極の氷すべてをわれに呉れよ
  月と池あまり歩かずに帰れる
二等船室 字の鳥が字の冬空を

「翻車魚」3号(ふくろふ号)特集・関悦史 出ました!


「翻車魚」3号を第29回文学フリマ東京・展示「句の景色」で販売します。
→●翻車魚は第29回文学フリマ東京に参加します。(テー02)
→●Title展示「句の景色」に、翻車魚メンバーが参加します。
12月中旬以降、ほかのお店や通販での販売に切り替わります。

*****

「翻車魚」3号(ふくろふ号)特集・関悦史
500円

巻頭エッセイ  
取り合わせの科学  山岸純平

招待作品
梟が  佐藤智子

特集 関悦史    
セキエツを味わうための十一の皿 小津夜景   
小津夜景選 関悦史100句    

俳句 
五十題     関悦史
エッセイ 
不眠症の時間旅行 関悦史

俳句 
BEER & BANANA  佐藤文香

翻車魚は第29回文学フリマ東京に参加します。(テー02)

翻車魚は第29回文学フリマ東京に参加します。
よろしければお立ち寄りください。

11/24(日) 11:00~17:00
東京流通センター・第一展示場 
翻車魚のブースは入場口近くの「テ-02」です。

第29回 文学フリマ東京 詳細
翻車魚(俳句雑誌)の紹介

【販売するもの】
新しいもの
「翻車魚」3号 ふくろふ号 特集・関悦史
◯「guca paper 2019」
◯トオイダイスケ『greyish blue』(CD) →試聴
新刊 藤田哲史句集『楡の茂る頃とその前後』(左右社)(限定5冊)

既刊
◯「翻車魚」バックナンバー
・創刊号
・2号(特集・佐藤文香)
◯佐藤文香掌編小説集『そんなことよりキスだった』(左右社) →紹介
○山田耕司句集『不純』(左右社)→紹介
・山田耕司缶バッジ
・佐藤文香俳句葉書(イラスト;後藤グミ)


【特典】
文学フリマ会場で「翻車魚」『そんなことよりキスだった』をお買い上げくださった方には、佐藤文香の掌編ペーパー「裏・伊勢丹奇譚」をお付けします。

【店番シフト予定】(助っ人・トオイダイスケ)
11:00〜12:00 佐藤・トオイ
12:00〜13:00 佐藤・関
13:00〜14:00 関・トオイ
14:00〜15:00 トオイ・佐藤
15:00〜16:00 関・(佐藤※近所のブースの手伝い
16:00〜17:00 関・佐藤
※当日の状況によって変更の可能性あり(佐藤ツイッターで情報を流します。トオイさん・関さんに会いたい方はチェックしてください) 
※当日、関・トオイ・佐藤の作品をご購入いただいた方には、ご希望があればサインします 

Title展示「句の景色」に、翻車魚メンバーが参加します。


東京・荻窪の本屋 Title 2Fギャラリーにて開催する展示「句の景色」に、関悦史・佐藤文香が参加します。

この展示は、佐藤のもうひとつの活動基盤である「guca」が行うものです。「翻車魚」の仲間である関悦史さんにも参加してもらいましたので、関さんファンの方はぜひお越しください。

***

句の景色

詳細はこちら → 本屋 Title

会期:2019年11月16日(土)〜12月2日(月)12:00〜21:00
*毎週水曜・第三火曜休 *イベント開催日(11月18日、21日、29日)は18:00で終了
会場:本屋 Title 2階ギャラリー
167-0034 東京都杉並区桃井1-5-2

|俳句
生駒大祐/福田若之/藤田哲史/高山れおな/関 悦史/小川楓子/佐藤智子/永井 祐/佐藤文香/原 麻理子

 |デザイン
梶原 恵/矢崎 花

 |イラストレーション
原 麻理子

 |展示構成
佐藤文香/原 麻理子