2020年2月18日火曜日

010*2020.2



作品 
▶︎メジェド  関悦史 

作品 
▶︎楽しい仕事仲間  佐藤文香

散文
▶︎日記(2019.12.17~2020.1.15)  関悦史
▶︎日記(2020.1.16~2020.2.15)  関悦史

日記(2020.1.16~2020.2.15)  関悦史

1月16日(木)
 高橋克彦『悪魔のトリル』読了。
 逆流性食道炎。頭痛。

1月17日(金)
 動悸。台所で倒れる。

1月18日(土)
 体調的に座業が出来ずに遅らせていた裕明賞冊子の校正をやっと済ませる。
 デズモンド・モリス『裸のサル―動物学的人間像』、五木寛之『戒厳令の夜(上・下)』読了。装幀懐旧買いしてしまった古本の消化が続く。

1月19日(日)
 赤江瀑『夜叉の舌』『罪喰い』他読了。

1月20日(月)
 泡坂妻夫『乱れからくり』読了。
 終日起き出せず。

1月21日(火)
 買い出し。
 血圧低下のためか背が重く、しんどい。
 「はたらく細胞」後半見る。

1月22日(水)
 「100年俳句計画」の選句選評。
 打ち合わせ的なメール数本。

1月23日(木)
 通信添削のほか何も進まず。

1月24日(金)
 高階秀爾『美の思索家たち』、三浦哲郎『忍ぶ川』読了。
 ブログを開けてみたら今日のアクセスがゼロというバグ。
 腹痛。

1月25日(土)
 年末に切って積んであった枝をようやく束ね、可燃ゴミに出す。
 近所の畑だったところにドラッグストアが出来ていた。

1月26日(日)
 古紙回収に段ボール等を出す。

1月27日(月)
 『須藤徹全句集』ようやく読了。

1月28日(火)
 共同通信の時評を書く。
 NHK文化センターからメールで「土曜俳句倶楽部」の清記。

1月29日(水)
 午後、山崎祐子さんと土浦市教委のH氏が来宅。片付けた炬燵の上に座椅子を立てて紙を貼り、臨時の撮影台にして、曾祖父・関勝久手製の「かすみ人形」を一個ずつ取り出し、全点撮影し直す。市立博物館の紀要に載る論文のための写真。

1月30日(木) 
 市内のブックオフまでサイクリングして(運動と思わなければ行ける距離ではない)百円本を10冊買う。
 入ったことのなかったゲオでマンガ、伊藤いづも『まちカドまぞく』1,3,4巻も購入。図書カードを利用したとはいえ、マンガを新刊で買うなどいつ以来か。ネットで無料公開されていたアニメを特に嵌まるでもなく淡々と見ていただけだったはずが、終わってから妙な飢餓感が出てきていた。ある朝突然、角と尻尾が生え、魔族の後裔として覚醒してしまった善良な女の子が、倒すべき魔法少女と、何故かなし崩しに仲良くなってしまうストーリーなので、日常系に近い緩さが身上の作品とのみ思っていたが、途中から意外なくらいがっちりとプロットが作り込んであることに気がついて、先が知りたくなったためである。

アニメ「まちカドまぞく」は 2月20日までネットで全話無料公開中です。 →こちら

1月31日(金)
 打ち合わせメール多数。
 福本和也『謎の巨人機』読了。
 深夜、携帯への警報と同時に震度4の地震。CDが落ちる。

2月1日(土)
 「土曜俳句倶楽部」出講のため、青山のNHK文化センターへ。
 受講者から板チョコを数枚頂く。奇しくも今日の句会に私が出したエジプトの「メジェド神」のイラスト入りパッケージ。
 行き帰りに、柏、松戸、池袋、秋葉原のブックオフで百円本を買い込む。

2月2日(日)
 血圧低下らしい悪寒と眠気。

2月3日(月)
  歯医者へ。予想以上の出費。今まで担当だった医師から退職の挨拶。
 市の北部から隣町にかけてサイクリング。郊外型書店やリサイクルショップは閉店、移転が多く、店によっては既に廃虚化していた。富士書店で百円本4冊購入。
 ご近所から恵方巻きを頂く。割高なので終生食べないものと思っていた。
 遠縁から電話。葬儀出来の知らせ。

2月4日(火)
 背の凝りひどく、座っていられず。
 深夜やや持ち直し、佐藤愛子『娘と私の時間』、吉野信『カラー版 アフリカを行く』、オーギュスト・ラシネ『民族衣装』『世界装飾図』、中野雄『ウィーン・フィル 音と響きの秘密』読了。

2月5日(水)
 「土曜俳句倶楽部」欠席投句の講評を書く。
 不調続く。
 草野唯雄『人みな欲望を持つ』読了。

2月6日(木)
 稿料振込の遅れがあったらしく、お詫びの電話が来る。
 内田康夫『追分殺人事件』のみ何とか読了。
 夕方、貧血気味に寝入る。
 微妙に問題含みのメールが来る。

2月7日(金)
 遠縁の家へ弔問に行く。
 神経に障るのでツイッターからしばらく離れることにする。ときどき数日ツイッターを切ると、妙に深く休みを取った気になる。

2月8日(土)
 郵便局へ。
 ゲオに『まちカドまぞく』5巻が入っていたので購入。
 資料一箱届く。

 2月9日(日)
 小野村来宅。市内の古い団地でオリビア撮影。狐面も登場させてみる。

  →オリビア写真館 Part12

 近所を歩いていたら、かつてアパート、公園、テニスコートがあった空き地に再開発の重機が入っており、下の神社の細道からの通り抜けが不可能になってしまっていた。幼児期から慣れ親しんだ地形がごりごり変えられると、脳を削られる思いがする。
 つくばのブックオフで百円本10点。

2月10日(月)
 通信添削少し進める。
 羽生善治、NHKスペシャル取材班『人工知能の核心』、ジミー・カーター他『知の英断』読了。

2月11日(火)
 ブログに最近読んだ句集をまとめ上げ。
 デズモンド・モリス『「裸のサル」の幸福論』、川又千秋『火星の白蛇伝説 星界伝奇』、宇野千代『私はいつでも忙しい』、春日武彦『不幸になりたがる人たち―自虐指向と破滅願望』読了。『不幸になりたがる人たち』はかなり前の本だが、生存への方向転換が「面倒」だからというだけの理由でそのまま自殺に踏み切ってしまう事例など、現在の政権支持率高止まりという奇現象の内実にも通じている気がする。

 2月12日(水)
 祖母がカツカレーを作る夢(実際に作ったことはほとんどなかったはずだが)。
 田中裕明賞選考日決定のメール。
 柿本多映さんと長電話。
 岩村忍『アフガニスタン紀行』読了。

 2月13日(木)
 買い出し。
 週刊俳句の新年詠一句鑑賞を書く。
 中村紘子『チャイコフスキー・コンクール―ピアニストが聴く現代』読了。審査員側からの率直過ぎる内幕話。

2月14日(金)
 ペンキ塗りのセールスが来る。
 宇野千代『私のお化粧人生史』、堀田善衞『めぐりあいし人びと』読了。

2月15日(土)
 河野冬子さんからDM。亡父・河野典生の未刊行長編『翔ぶ一族』がオンデマンドペーパーバックという形で書籍になったとの知らせ。
 山崎祐子さんからメールで土浦市立博物館紀要の原稿が来る。うちの「かすみ人形」に関する事実関係をチェックする。
 先月末辺りからか、出歩けるのに座っていられず、何も書けない妙な不調が続いている。

Photo by K.Onoura

日記(2019.12.17~2020.1.15)  関悦史

12月17日(火) 
 霧雨。買い出し。
 新学社編集部編『国語活用資料集』の献本が来る。拙句《くらげに「おーい」と手を振る浪速の女学生》が採録された学習教材。
 『俳壇年鑑2020年版』に出す自選1句を《生の時間秋の淡海まで来たり》で記入。学生俳句合宿の吟行で、琵琶湖の縁に座り込んで作ったもの。
 市村弘正・杉田敦『社会の喪失―現代日本をめぐる対話』再読。

 12月18日(水) 
 左肩の凝りひどい。
 関悦史論を書いてもらった小津夜景さんに「翻車魚」3号を発送。
 「俳句」の特集《名句で解決! 悩み別作句法》の原稿を何とか書く。体験談の依頼だったが、出自や経歴が例外的なのでどこまで読者の参考になるか。
 通信添削を3通済ませる。

 12月19日(木) 
 寒さがぶり返す。冬季鬱の眠気再発。
 山岸哲『マダガスカル自然紀行―進化の実験室』、山内景樹『日本船員の大量転職―国際競争のなかのキャリア危機』読了。
 夜、「翻車魚ウェブ」用の大洗エッセイと俳句だけまとめて送稿。
 小松和彦『神隠しと日本人』読了。

 12月20日(金)  
 久々に脇の道に、ビニール袋に入れた犬の糞を置かれる。
 「国民年金保険料納付状況のご案内」なるハガキが「日本年金機構民間委託事業者」だという企業の名で来た。民間に委託されたらしい。
 「青山」2月号用の井越芳子句集『雪降る音』評を書く。

 12月21日(土)
  左肩の凝りがひどい。
 ゲラの類手付かず。
 何も読めず。

 12月22日(日) 
 地元の古本まつりで高階秀爾『美の思索家たち』等古本6点購入。柴山雄三郎『子供のききたがるモノシリ博士の理科』なる昭和初期の古本があったが、4,400円の高値で断念。
 「俳壇」の《月間日記》(この原稿のために「翻車魚ウェブ」の日記11月分は飛んだ)、日経新聞の俳句年間回顧、「円座」連載の3本のゲラを返す。
 入れかわりに『第十回田中裕明賞』冊子の紙ゲラがどかっと届く。

 12月23日(月) 
 凝り、痺れ、眠気。
 コーヒーをひっくり返して、本の山に撒き散らす。少量だったためか意外と染みにはならず。
 共同通信の時評のゲラを済ませる。
 井上ひさし『笑談笑発―井上ひさし対談集』、山口昌男編著『二十世紀の知的冒険―山口昌男対談集』読了。

 12月24日(火) 
 また古本屋へ。石川達三『蒼氓』、 江田絹子『津軽のおがさまたち―民間信仰の旅』、A・ベリャーエフ『ドウエル教授の首』他購入。
 竹内実『北京―世界の都市の物語』読了。
 島田牙城さんから封書で薄い箱の菓子を頂く。邑書林から出してもらった『俳句という他界』の絶版が近くなってきたとの手紙付き。
 日経新聞の再校、「俳句」「俳句界」のゲラを済ませる。

 12月25日(水) 
 台所に山積みになっていた古紙を少し束ねる。
 「100年俳句計画」の選句選評。各社年末進行に入っている煽りで、連日地道に仕事ばかり。

 12月26日(木) 
 低気圧のためか、息の入らぬ不調。
 買い出し。
 江田絹子『津軽のおがさまたち―民間信仰の旅』読了。著者が体験した、巫女のおばさんに抜き身の日本刀を肩に当てられての肩凝り治療、ちょっと受けてみたくもなる。

 12月27日(金) 
 昨日注文した灯油の配達が忘れられていて催促。暗くなってから届く。

 12月28日(土) 
 武藤紀子さんから封書。全国俳誌協会の編集賞特別賞を「円座」が受賞したとの知らせ。
 午後、小野村来泊。家から駅まで歩き、市内各所でオリビア撮影。ねずみ坂、弁天池公園、S字坂から、ピアタウンの向こうの蓮田を通って図書館屋上、古本屋へ。
 昭和感が濃く残る「ふかわ」でカツ丼を食って、夜の市街を亀城公園まで歩き、バスで一度帰宅。
 小野村の車で出直し、工場街の先の紫ヶ丘公園へ。天体撮影につきあわされる。三脚等の機材を抱えて騒々しく乗り込んだら、無人とばかり思っていた真っ暗なベンチから男が二人帰っていった(後で検索したらハッテン場であったらしい。邪魔をしてしまった)。
 夜、小野村にwindows10パソコンのセットアップを見てもらう。

 12月29日(日) 
 昼、小野村と大成軒でワンタンメン。こちらも昭和の食堂。家族連れや地元のマイルドヤンキーで繁盛。
 その辺を撮影。
 市内と柏のブックオフを車で回って百円本を多数購入。小野村宅に泊まる。

 12月30日(月) 
 テレビをだらだら見ているうちに、小雨が上がったので、小野村宅から電車で都内へ。
 西日暮里から鶯谷まで歩き、オリビア撮影。

  →オリビア写真館 Part11

 西念寺の手前の「古書ドリス」でC・G・ユング『ヨブへの答え』他古本7点購入。

 12月31日(火) 
 電車で帰宅。
 「田中裕明賞を読む」ツイキャスを見る。
 神棚の掃除と酒、塩、米、水の交換。
 某誌の稿料の通知。あまりの安さに何かの間違いかと思う。
 年越しと同時に佐藤さんが「翻車魚ウェブ」を大洗吟行の回に更新。

 2020年1月1日(水) 
 ネズミ年の読初めとして、西村寿行『滅びの笛』を再読。大発生したネズミで甲府盆地が壊滅するパニック小説である。
 続編の『滅びの宴』もついでに再読。佐藤任『密教の神々―その文化史的考察』読了。

 1月2日(木) 
 A・ベリャーエフ『ドウエル教授の首』再読。小学校の図書室で、児童向けのリライトだけ読んでいたトラウマもののSF。首だけにされて生きている登場人物が3人もいたことはすっかり忘れていた。
 柿本多映さんと長電話。

 1月3日(金) 
 夜、トランプ大統領がイランのソレイマニ司令官を暗殺の報。ツイッターの世界のトレンドが「ww3」「worldwar3」になる。

1月4日(土)
  週刊俳句に新年詠を出す。
 買い出し。

1月5日(日) 
 C・G・ユング『ヨブへの答え』、マルグリット・デュラス『タルキニアの小馬』読了。

1月6日(月) 
 三宅雪子元衆院議員自殺の報。新宿駅南口でも首吊り自殺があったらしい。
 洗濯。ベランダが突如、鳥の糞だらけになった。
 郵便局に出たついでに散歩。大震災で罅が入ったまま放置されていたN文具店が更地になっていた。

 1月7日(火) 
 気圧低下で泥酔のようなしんどさ。
 「俳句四季」の特集《「風土」を詠む》に出す句を選び、「俳句」のアンケートもようやく記入。「blog俳句新空間」にも久々に投句。
 深夜なぜか「悪役令嬢」転生ものの本を検索し始め、思いのほか大量にあって時間を潰してしまう。テン年代半ば頃から急速に広まったジャンルか(1,2冊読んでみて案外面白かった)。

 1月8日(水)
  郵便物を出したり、読んだ句集をブログにまとめて上げたり。

 1月9日(木) 
 坂崎乙郎『象徴の森―神秘と幻想の画家たち』、高階秀爾『フィレンツェ―初期ルネサンス美術の運命』読了。

 1月10日(金)
  買い出し。国道で親類に会う。
 大澤真幸『戦後の思想空間』読了。

 1月11日(土) 
 昼前、小野村来宅。一高の旧校舎(文化財)が一般公開されていたので見に行き、あとオリビア撮影。外に人体模型等が捨ててあった。

  →オリビア写真館 Part10

 家の近所を撮り歩いていたら、何度も通ったことのある道のわずか一本先に、ボロボロに荒れ果てた武家屋敷のような広大な家が残っていた。
 天理教のどっしりした木造の道場はいつの間にか更地にされていた。小学生の頃、同級生が住んでいて中で遊んだことがあった物件。
 つくばのブックオフで百円本4点買う。
 安井浩司さんからハガキで「翻車魚」3号の感想。

 1月12日(日) 
 熱っぽさ。何も読めず。新宿の安倍辞めろデモも行けず。
 明日の「句の景色」展打ち上げにも欠席の連絡を入れる。

 1月13日(月) 
 AbemaTVで今期のアニメを何本かと、無料公開中だった旧作「はたらく細胞」前半を見る。

 1月14日(火) 
 windows7サポート終了の日だが、パソコンの乗り換え作業は鬱々として進まず。
 マルクス・アウレーリウス『自省録』ようやく読了。

 1月15日(水) 
 森村誠一『悪魔の飽食 第三部』、なんごくピヨーコ『悪役令嬢改め、借金1億の守銭奴令嬢です』読了。
 日本現代詩歌文学館から封書で「翻車魚」3号受納の通知。「今号から定期寄贈雑誌コーナーに最新号を開架」とのこと。

Photo by K.Onomura

2020年2月2日日曜日

メジェド  関悦史


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メジェド    関悦史 

車窓を流れて穭田ジョン・ケージは好きかね
炬燵にゐて木乃伊になつてゆくところ
冬と言ふアルチンボルド顔(がほ)をして
縄文土器が身に入りくる霜夜かな
一碧楼忌の無響室の椅子
溢れ出たる本に取りまかれし布団
冬深む夜の宝石はいづれも火
凍る噴水になりたいと騒ぐ幼女かな
なまあたたかき大寒メジェド神の目の
バレンタインデー血しぶきの画像が好き

楽しい仕事仲間  佐藤文香




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楽しい仕事仲間    佐藤文香
「鏡」31号(2019年4月1日発行)より一部転載  

定休日・かもめ・結んで切るリボン
山眠る三連プリン三人で
初冬のぼくら楽しい仕事仲間
釣堀のをぢさんといつものからす
好きな淋しさ鶺鴒は頷きながら
黙読は眼窩に響き冬の空
今週の今日のいてふの降りかさなる
雪の都電の雪印乳業の人たち
雪の鳥たちはとまつて木の高さ
木を過ぎて木々と出会ひぬずつと雪