2020年8月15日土曜日

016*2020.8



作品


散文詩

散文

夏の夜  佐藤文香

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私は俳句をこうやって読んでいる①『天の川銀河発電所』より  佐藤文香


なんという霧にまかれていて思う  福田若之 


「なんという(こと)……!」、霧にまかれていて、思う。上五で切る。これがナチュラルな読み。
霧のなかのこの世界とは……!、または何かの報に接して、なんという……、と思った。
ここで、作者が思ったことはきっと〜などと推測するのは、この句から離れる。あくまでも、「……!!」の感覚。 

そこに、上五で切らずに「なんという霧……!」、そんな霧にまかれていて(何かを)思う、という読みも併走させる。
さらに、なんという(名の)霧なのか、そこでこの人は何を思ったのか、とも考えてみる。当然、霧に名はない。 

いずれにせよこの句には、霧と、思うことしか出てこない。 

だから私は、霧のことを、そのうちがわにいるこの人の心のことを思う。 
自分の輪郭があやふやになっても、まかれて「いて」思う、この「いて」のところに、存在がある。思っている内容がわからなくても、〈思う〉という心の動きだけははっきりしている。あとは霧。どこの霧かはわからない、どこからも切り離されているようなかんじだけれど、ミストのかんじはわかる。

匿名性と実存。

2020年8月1日土曜日

色の変はる服  佐藤文香



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 色の変はる服   佐藤文香 

初夏の花をはり近所の坪単価 
誤作動でかかる電話や庭の蜘蛛 
夢やがて泡を失ふ黒ビール 
昼の雨かはうそどもは抱き合ひ寝 
親に顔舐められ待ちや仔チーター 
くちなはや濡れると色の変はる服 
買うて帰りぬシャボテンの明日咲くを

卵  関悦史

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 卵      関悦史 

長梅雨の川沿ひや木に万の鷺 
果てなき梅雨何ものぞ卵置きに来る 
五島勉大往生二〇二〇年六の月 
スティーヴ・ライヒかかり詰めなる金魚鉢 
人なき都市に数秒舞踏せり七月 
千の義肢倒れて虹の立ちしこと 
針穴をわが通るとき百日紅 
独居の庭は神経線維茂り茂る 
冷夏誰もゴーレムと魂つながりぬ