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花と夢 Ⅶ 高山れおな
三月三日、つげ義春先生が八十八歳で亡くなられた。私自身は愛読者を名乗れる程の者ではない。ただ、二〇一三年に、山下裕二氏と編集部の先輩Yの驥尾に付してお目にかかる機会があつた。取材は受けないと事前に断られてゐたが、一通りのご挨拶が済むといきなりあれこれ話し出された。山下氏にはもとより心を許してゐたのに加えて、Yが作品を深く読み込んでゐるのを感じて興が乗つたのだろうか。取材ではないといふ建前だから録音機は回せなかつたけれど、それはまさにインタヴューで聞きたいやうな内容だつたから、私は一時間か二時間の間、書記に徹してペンを走らせ続けた。そのメモを起こしたものがもとになつて、かなり久しぶりの新規のインタヴュー記事がメディアに出ることになつたのだつた(「芸術新潮」二〇一四年一月号「大特集 デビュー60周年 つげ義春 マンガ表現の開拓者」)。
逃げ水の向かうつげ義春の春
花の雨に紛れぬものは松の芯
相模野や桜敷きつめフリージア
三椏が咲き盛(さか)る陰謀の巣か
花束のラナンキュラスが愛の渦
チューリップ狂へる如き明るさに
つつじ燃え暗き骨格隠したり
鮟鱇の顔夢を過ぎ傘雨の忌
一家みな口から生まれ更衣
志す富士見えてくる夏模様