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音楽地獄 関悦史
秋昼や蕎麦屋の卓に白き猫
月の客とは廃ビルのあらゆる窓
クリスタル置時計各種止まり冷ゆ
秋の蚊のとほることより耳の夜
人々といふ管々(くだくだ)も芋嵐
検察は巨悪の一部秋渇き
秋声がボスの音楽地獄から
ハンバーガーからガザの血が垂れに垂れ
始皇不楽(しくわうたのしまず)といへり虚栗
秋の風われ住むゆゑに空家めく
ボス=画家ヒエロニムス・ボス
始皇=始皇帝
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みゆき通り 佐藤文香
月あかり空芯菜を油に委ね
この舟で月へこころをつかはずに
死後白と決まる詩集の表紙へ指
除湿の部屋のレースカーテン愛を恋ふ
接吻と言ふ唇とがる ほしがらす
秋は手紙みゆき通りへも届けられ
持ち歩く袋に鮫の絵が冷えて
オクラの葉小柄な蝸牛が乾く
ルールづくりに鬼の加はる秋夕焼
王林切る刃渡り足りぬこのナイフ