2025年4月4日金曜日

072*2025.4


俳句・短歌対抗草野球大会

5句+5首

10句

10句



COMING SOON 
高山れおな第5句集『百題稽古』(現代短歌社)



阿吽      高山れおな

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阿吽      高山れおな

  大阪市立科学館
天象儀(プラネタリウム)出でて春愁とも違ふ
  道頓堀
愚かなる看板楽し春寒し
  大阪城
啓蟄や此処になにはの夢の城
  ちんどん通信社
東西屋蜷の道ほどくねり行く
  難波橋 二句 
橋護る阿吽の獅子や春の水 
春光の石に刻みてなにはばし
  大阪メトロ堺筋線
天下茶屋暮れなづむ空ありにけり
  大阪市中央公会堂特別室天井画
拙にしてうららか雲と神々と 
  新世界 二句 
春の道またぐ通天閣の春 
亀鳴いてゐてビリケンの糸目なる

2025年4月1日火曜日

特集 俳句・短歌対抗草野球大会

2025年3月23日、「詠売巨大軍」(俳句)と「文明レッドライツ」(短歌)による草野球の試合が行われました。→詳細(ウェブサイト「巨大」にジャンプします)
後日選手のみなさんに作品を、観戦者の代表として廣野翔一さんに観戦記を依頼しました。ご寄稿いただいた作品とコメントを掲載いたしします。








短歌 文明レッドライツ


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文明レッドライツ  

 久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど 
飽かぬかも さらに自分でやるほうがプラズマ 牽制の一〇〇年間    郡司和斗

その先にあるはずだった手ごたえの空振りが消えない次の日も      門坂崚

俳人はこんなボールを投げるのか低めのあとも低めを投げて       酒田現

球場の照明塔は見えるのにビオトープに迷い込んでしまう        鈴木ちはね

一回裏 キャッチャーマスク越しに見る世界のせまさだけおぼえてた   貝澤駿一

声に声、風下に立つ立ちながら花も散るべきときは散るんで       藤井柊太

白球も見えにくくなる夜間試合(ナイター)を初めて内でみていた 続け   芒川良

きっとまた発明できる ぼてぼてのゴロはこけたら安打になって     平出奔

流星のようにレフトへ飛んでいく白球 あたふたするしかないな     橋本牧人


俳句 詠売巨大軍


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詠売巨大軍

まり投げて広場の広き遅日かな    伊東夏生

春の野を走るあひだも喪へる     板倉ケンタ

駘蕩とベースボールをいつまでも   木内縉太

疑いなき光線 花のころを走る    細村星一郎

春宵を駆けて二塁に至りけり     加藤右馬

凡打にも走り疲れや春月夜      柳元佑太

ふうりんは野球のやうにつづくなり  大塚凱

塁上に半袖も居る春半ば       島崎晃太郎

咲きそうな夜風だ九塁まで走れ    佐藤文香


ピッチャーの孤独  貝澤駿一歌集『ダニー・ボーイ』 より     佐藤文香

野球という競技に初めて参加させてもらって、こういったアマチュアのゲームであっても、ピッチャーというのはずば抜けて大切な役割だと今さら知った。 実は、私は大学1年生のころ半年ほどクリケットサークルに所属しており、一瞬だけボウラー(ピッチャー)を目指していたが、クリケットにはストライクゾーンという概念がなかったため(ワンバウンドさせるし)、野球で「ストライク!」と言ってもらえるのがこんなに狭い範囲であることを今まで知らなかったのである(ここから書くことは、それくらい野球を知らない人間の感想である)。

打順が来たら打席に立ち、言われたところを守るだけなら、練習していなくても草野球には参加できる。しかしピッチャーはそうはいかない。そのゾーンに投げ続けられないと、試合にならない。

しかも、ピッチャーは孤独だ。ワイワイ声を出して元気を出したりしたら気が散ってしまう。フォアボールが続くと精神的にも肉体的にも苦しい。疲れたらすぐにチェンジできればいいが、シロウトの草野球で投げられる人は、ほかにほとんどいない。

しかし、貝澤さんのサイドスローは落ち着いていた。相手チームのことながら、安心して見ていられた。

くりかえすシャドウピッチの静けさが自分の呼吸だけを伝える  貝澤駿一『ダニー・ボーイ』 

シャドウピッチとはボールを持たずに(投げずに)投球フォームの練習をすること。きっと貝澤さんは今までの人生で、幾度となく自主練をしてきただろう。今回の草野球大会の練習のためにも、シャドウピッチをしただろうか。

自分の状態を、自分の行為を通して理解するということ。ひとりで短歌を書くというのも、力一杯シャドウピッチをして、自分の呼吸を聞くようなものかもしれない。


3月1日に刊行された貝澤駿一歌集『ダニー・ボーイ』は二首目からいきなりフットサルの連作で始まるが、野球ファンの方はずっとあとにある連作「白球残影」を楽しまれるとよいと思う(私はフットサルもしたい)。


佐藤文香謹選
貝澤駿一歌集『ダニー・ボーイ』(本阿弥書店,2025.3)より十首 

教科書をひらけばモスクワの匂い 君をサーシャと呼ぶ日々がある

ジャングルジムに登れば空から見えている僕らも若い銀河のひとつ

水際に腕の産毛をひからせて笑うひとりにひとつの冷夏

落ちてくるさくらの花を打ちかえす野球部のあほの袖のかがやき

知らない国の国技のようにじゃれあった夏の手ざわりだけ思い出せ

教えられた通りにその国を知るな 銃 病原菌 スケートボード

タップダンスならば僕にもできるかと試してみたり秋の陽のなか 

戦うことを恐れてしまう夏の空その情けなさに救われながら 

ハマスタのウイング席でペガサスの目を持って見る薄暮の野球 

世界の果てに手負いの空があることの〈さくら通り〉の花冷えの雨


一人二言


⚫︎文明レッドライツ

橋本牧人
2打席1安打。ファーストで抑えられるところはぜんぶ抑えた、と思う。 

平出奔
2回表のヘッスラ、だと思われていたプレーはマジでただの転倒でした。次はクリーンヒット打って守備でもちゃんとアウト取るぞ!

芒川良
2四球1空三振。助っ人外国人SUSの名にかけて次は絶対にかっ飛ばします。

藤井柊太 
3打数2安打4打点「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になるし、もうなっていると思います。

貝澤駿一
小学5年生以来、20年ぶりに試合でキャッチャーをしました。本職のピッチャーでもふがいなく、つぎはもっと練習して臨みます。

鈴木ちはね
投安、三振、三振、四球(牽制死)、四球。前に飛ばすのが目標だったので、その点では勝ったと思っています。

酒田現
守備を頑張りました!サード楽しかったです。

門坂崚
三振と四球。悔しい。なにも言いたくありません。次は勝ちます!対戦ありがとうございました。 

郡司和斗
四球をきちんと見極めてチームに貢献。守備では声だしをがんばった。


⚫︎詠売巨大軍

島崎晃太郎
人生で初めてファーストの守備につきました(無失策)。ウイニングボールをキャッチする瞬間は震えました……!

大塚凱
ご覧くださった方には、これが俳人と歌人の戦いなどではなく、野球人と野球人の戦いだったことが伝わっただろう。 

柳元佑太
ランニングHR、2塁打と走り回った後の内野安打が一番足に効きました。死ぬ直前に思い出すレベルで活躍した気がします。

加藤右馬
2打数1安打2打点1得点。決勝の逆転タイムリーツーベースを放ちました。守備ではレフトオーバーの長打を許し、課題が残りました。

細村星一郎
打撃成績は3打数3安打4打点1犠打でした。様々なハードルを乗り越えてこのイベントを開催できたということがとにかく嬉しく、加えてその記念すべき最初と最後のアウトを二塁手としてグラウンドで記録できたのは最高でした。

木内縉太
永遠のような一瞬のような一試合でした。3打数2安打2得点を記録。

板倉ケンタ 
板倉(中)-柳元(遊)-大塚(捕)の中継プレーで本塁刺せたのがアツかったです。打撃がんばります。

伊東夏生
頑張って6イニング投げました。打撃は無安打だったので次は打撃でも貢献したいです。

佐藤文香
代走1回、大井競馬場前駅で打ち上げ会場を予約。6月のハーフマラソンに興味がある方は連絡ください。

詠売巨大軍VS文明レッドライツ練習試合観戦記    廣野翔一


「俳句VS短歌」

 ここに尾鰭が付いて、負けた詩形が滅びるなどの話も流れてきたが、試合が終わって数日経った今でも俳句と短歌は共存しているからそれはどうもガセだったらしい。いずれにせよ俳人と歌人で野球対決をするというニュースは俳壇、歌壇を駆け巡った。俳句、短歌の流れをたどると正岡子規にどこかでぶち当たるが、日本の野球も遡ると子規にぶち当たる。子規が「野球」という雅号を用い始めて135年経ったいま、俳人と歌人がグローブとバットを持ち出して土の上に立った。

俳句は細村星一郎、大塚凱を中心とした詠売巨大軍。チーム名が読売巨人軍のもじりなのはわかるだろう。「巨大」は細村がやっている俳句・短歌のポータルサイトの名前でもある。一方の短歌は藤井柊太率いる文明レッドライツ。「文明」は土屋文明、「レッドライツ」は斎藤茂吉の『赤光』から来ている。この両チームと両詩形の対決を面白がった関係者が観客として大井ふ頭のグランドに集まった。

すぐ試合開始するかと思いきや、詠売側から始球式があるとアナウンスがあった。マウンドに立っているのは「ホトトギス」主宰の稲畑廣太郎氏。試合当日にあった句会で聞きつけて急遽駆け付けたとのこと。子規がかつて「ホトトギス」の選者をやっていた歴史を考えるとよくできた話だった。

序盤は詠売巨大軍のペースではじまった。先攻のレッドライツ側をゼロ点で抑えると、1回から猛攻を見せる。レッドライツの立ち上がりの雰囲気を突くかの様に連続四球でたまったランナーを柳元佑太のランニングホームランで全員帰して4点を先制する。初回からとんでもないビッグイニングになると思っていた。しかし、4点を取られた後は先発相川弘道が落ち着き、追加点を与えない。2回は相川と詠売側の先発伊東夏生が抑えて両チーム無得点。3回表、レッドライツの打線がつながりはじめる。暇野鈴が四球で出塁すると、酒田現から橋本牧人までの4連打で2点を返す。3回裏に1点を返されるが、応援を含めてレッドライツ側がだんだん明るくなる。応援席の伊舎堂仁は「みんなに一首評書くぞー!」って叫んでいる。

そういえばバックネット裏の状況だが、応援席は明らかに俳句側の方が多かった。中には「伊東夏生」と書かれたミニ横断幕(?)も。どこからともなく「ビールいかがですか!!」の声も聞こえる。応援しているとときたま俳句側のベンチから両チームに応援を促す人が出てくる。「俳句側声出してますかー」、「今度はレッドライツいってみましょー」といった具合。一方、短歌側の廣野翔一は野球の担当記者のアカウントみたいに試合のスコアをXのタイムラインに流していた。

グラウンドに話を戻すと、4回は両チーム無得点。4回からレッドライツは捕手をやっていた貝澤駿一が投手として登板し、相川がキャッチャーマスクを被る。仕事で野球の指導をしている貝澤は間違いなくレッドライツの中でも屈指の実力者であり、彼の投球で反撃ムードが高まっていく。5回表、レッドライツはビッグイニングを迎える。詠売側の制球が定まらないため、押し出し四球で2点追加し、1点差とする。さらに暇野のランニングホームランやプレイングマネージャーの藤井のタイムリーで4点を奪い、試合をひっくり返す。8対5、レッドライツ側のボルテージは間違いなく最高潮、タイムラインの歌人たちも弾け飛んでいる。この回のリプレーを何度だって見たい。見せてくれるチャンネルはないのか。 しかし、詠売もまだ終われない、押し出し死球にタイムリーをぶち込み、8対8の同点に持ち込む。しぶとい。

6回表、均衡を破ったのはわれらがプレイングマネージャー、藤井柊太。レフト側へ大きなツーベースを打ち、1点を勝ち越してゆく。藤井柊太の背中が一番大きく見えた瞬間だった。この回はさらに押し出し四球で1点を追加し、10対8とします。このままレッドライツ側が勝つかもしれないという雰囲気を詠売巨大軍がもう1回かち割ります。連打を浴びせて同点、更にレッドライツ側の守備の乱れでさらに2点追加し、10対12と無情にもレッドライツを引き離していく。泣いても笑っても最終回の7回表、貝澤がライトへのヒットで出塁し、さらにエラーに絡めて藤井も出塁。この2人が帰れば同点になるし、ホームランなら逆転も行けるとベンチ、応援席の誰もが期待したものの最後は抑えられてゲームセット。手に汗握る勝負は10対12で詠売巨大軍の勝利となった。

しかし、こんなに白熱した勝負なのに、今回は練習試合だと言う。本来であれば上野の正岡子規記念球場で決戦をする予定が、球場がとれないというよくある現実的な理由で今回は大井ふ頭での練習試合という体になったらしい。6、7月に正岡子規記念球場が取れたら改めて決戦を行う予定とアナウンスされたが、正直待ちきれない。でも待ちきれないのは選手側もそうらしく、レッドライツは記念撮影後に、観客席に居た佐々木朔をスカウトしその場で入団が決定した。皆のシーズンがここからはじまっていく。  廣野翔一(塔、短歌ホリック)

春のナイター      佐藤文香



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春のナイター      佐藤文香


キャプテンの青い車の助手席で必勝バルーンを抱いていた

 春の湾岸相手チームにバット貸す

 日暮れ許して春や試合を始めよう

プレイ後に決まるルールに「了解」と言って持ち場に小走りで戻る

夜になる前の満塁ホームラン君の生徒に見せたかったな

フォアボール続く虚空へキャッチャーの熱い心が投影された

 バックネット裏の友だち星うるむ

 好守・安打 歓喜は花烏賊のごとし

 これで勝つアウトにイメージの虹を

攻守交代ごとに防具を貸し合ったこの春の夜は僕たちのもの



もろし      関悦史


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もろし      関悦史

家重く人身もろし春の地震
申告会場東日本大震災の日黙禱し
春の夢の階段として入り組むも
大学や春雪に魚描かれたる
蝶を見て蝶に食はれてゆく思ひ
大陸大のハンバーガーや鳥帰る
AI生成美女像無数春愁
LEDの春灯終夜目に尖る
小屋ごとサルら消えし彼岸の地面あらは
あたたかし物の値いくらでも上がる