2021年10月15日金曜日

ワイナリーと蠅  佐藤文香

Diary for October 8, 2021: Three Wineries and a Silver Fly

朝はベーグル。スーパーのベーカリーコーナーで買ったもの。ふつうに棚に陳列されているものを買うよりはうまいが、たぶんもっとうまい店があると思う。Tは仕事へ、私はまずはhousehold。アメリカ版クイックルワイパーSwifferの水拭きでリビングの床を拭き、これで玄関以外家全体を土足でなくすることに成功。仕事を少ししてから、Berkeley市が主催する工場見学ツアーへ。ひとりで。

10/1からCaliforniaのBerkeleyにいる。自分が選んだ生活というわけではなく。
いや、選んだか。
1年間住むと思う。

初めてバスに乗るべく、すでに入れてあったLyftというアプリの公共交通機関運行検索で見ながら最寄りバス停に向かうが、なぜか思っている52番バスがそこに停車しそうにない。もう少し遠くのバス停になら停まりそうなので、走ったりしながら向かう。で、待っていたのだが、アプリを見るとなぜかもう行ってしまったことになっていて、そんな馬鹿な、と周りを見まわしどこからどうやれば行けるか考えていたら、すごい勢いで52番バスが通過してしまった。

途方に暮れていてもしょうがないので、気を取り直し、Lyftの本来の用途である配車サービス(Uberとほぼ同じ)で車を予約。Univercity Ave.の見知らぬ場所で10分間じっとしていた。ようやく来てくれた運転手はいい人で、Lyftは初めてなんですと言うと、僕も初めてです、ハッハッハうそうそ、みたいな具合。運転もすごくうまかった。3分遅刻くらいでワイナリーに到着。場所が合ってるかわからなかったのだが、人が集まっているところまで運転手が行ってくれて聞いてくれ、どうにか参加となった。参加者への一斉メールのアドレスをすべてTo欄に入れてしまいさらに開催場所の番地をtypoし送り直してきたインターン生が市の側の人間で、イケメンだったが仕事はできなそうだった。先週来たので日本のものですが、と言いつつワクチンの接種証明をインターン君に見せ、グラスに注いである白ワインをもらって飲む。重めすっきり。私より遅れて来た人もいたので、まぁそんなもんだよなと思った。

まず主催者の女性の話を聞く。ほとんどわからないが、地域活性化の仕事をしている人のようだった。次にここCovenantのワイナリーのおじさんの話。
ワインの横に細長いクラッカーがグラスに用意されてあり、それとワインのマリアージュが素晴らしいとしゃべりながら食べて見せるので、私がグラスごと持って皆に配ったら主催者の人にありがたがられた。こういうことはインターン君がやるべきだろう。そして参加者一人ずつの簡単な自己紹介。想像通り高齢者の友人グループ、リタイア後の夫婦、起業家、地域の仕事をしている人など。私は先週東京から来て英語はあまりわかりませんが友達がほしいです、ワインは好きですと言ったら、日本でもうちのワインは売っている、山崎と取引している、日本に帰って美味さを広めてくれ、カンパイ!と言ってもらって注目された。そのあとの赤ワインはカベルネらしい味。工場に入って圧搾の機械や樽、葡萄殻を見せてもらう。途中、30代くらいの一人で来ている女性が声をかけてくれ、少し話す。あまりわからなかったが、Chicago出身、このあたりで地域の仕事などもしているらしく、日本だと参天製薬と取引をしたことがあると言っていた。オタクっぽいかんじで、こっちがあまり理解できないことがわかっていてもつい早口になってしまうといったかんじだった。

3つのワイナリーをまわるうちの1つ目なのにのおじさんの話が長く時間を食ってしまい、名刺をあげるから持って遊びに来るようになどと私たちにも話しかけてきて、主催者女性がありがとうありがとうと話を遮り、次のワイナリーDonkey and Goatへ。
ここでもワイナリーの、こちらはまだ若そうな醸造家の説明を受けるが、例によってほとんどわからず。シンプルな作りをしているのと、東京やパリでも売っているというのだけわかった。飲ませてもらった赤ワインはピノノワールで、なるほど案外繊細なつくり。品のいい夫婦が声をかけてくれた。夫の仕事で1年来ていると言うと、その間あなたはワインテイスティングなのね、と笑われたので、ここで私がやりたいことはカリフォルニアワインを味わうことだけです!と答えたら、Alamedaのワイナリーもいいと教えてくれた。NapaやSonomaはどうかと聞くと、Napaのは一つ一つが大きく、ツアー客がたくさんだからLivermoreに行くといい、と教えてくれた。今日一番の知っ得情報だったと思う。

3つ目は、hammerling wines、ここは新興ワイナリーらしく、道沿いにテーブルと椅子がたくさん出してあり、そこでテイスティングしている人が多くいた。
ここでは話を聞くだけでテイスティングはなく、ショップカードだけもらった。東京にはまだ進出していないそうだ。 大幅に時間を超過した上、最後シメの話もなく流れ解散で、見学中スマホばかりいじっていたインターン君もどこかに行ってしまい、行きにLyftで来たものの帰りはバスで帰ろうと、少し話しかけてくれた大柄な紳士にバス停の場所を聞くと、北側に向いて歩いて行けばいいということだったのだが、その連れのたぶん中国系の中年の小柄な女性が、downtownに帰るなら私たちの車に乗せてあげると言ってくれて、ありがたく乗せてもらうことにした。自分の家の住所を打ち込むようにスマホを渡される。それにしたがって連れて帰ってあげるわ、と。こういうときにお金などを渡した方がいいのかもわからなかったが、とにかく感謝を伝える。中国なまりの英語で聞き取りにくかったが、日本食が恋しいでしょ、とか、東京に行ったことがある、とか、私のわかりそうなことをいろいろ話してくれた。APAホテルの社長に似ていたがそれは伝えなくてもいいことだ。

車内で名前を今一度聞かれ、Ayakaです、と言い、こちらもお聞きしたら二人はDavidとシュリン(?)だとわかる。この週末はFleet weekだからSan Franciscoにくるといい、と教えてもらう。検索するとFleet weekは航空機のショーで、Berkeleyからも見えるか聞くと、海沿いなら見えるだろうけど、やはりSan Franciscoがいいとのこと。この週末はゆっくりしようと思っているので行けないなとは言わず、San Franciscoで好きなレストランはありますか、と聞くと、Waterbarかな、シーフードと景色がいいと教えてくれた。私のアパートの通りは狭いから、近くならどこで降ろしてくれてもいいと言ってあったが、家の前まで来てもらえた。うちの通りは面白い家が多いので、シュリンはこれもこれもと写真を撮りたがっていた。礼を言い、日本語で「ありがとう」とも言い、帰宅。私がいない時間、夫は家に帰って来ていた。PCとテーブルが受け取れてよかった。夫はまた職場へ。

こちらは日差しが強すぎて、サングラスをかけていても目がやられる。マンゴージュースとヨーグルト、ミルクでラッシーを作って飲み、チョコを食べて少し寝た。 夕方、狭いダイニングにて、遠山陽子『三橋敏雄を読む』の3校のチェック。届いた折り畳みテーブルは脚が短く、今ある椅子だと猫背になる。買い物に失敗した感がある。再校時期がちょうど渡米と重なっていたものだから、そこを人任せにしていたら、3校でまだかなり赤が出てしまった。これは11月に刊行される『遠山陽子俳句集成』のおまけのようなかたちで遠山さんが「弦」に連載していたのをまとめたもので、版元を通さず私家版、デザイナーの佐野さんと私でつくっているもの。 

昨日買ったクッキーにデカい銀蝿が入っていたのでしょんぼりしながら葬ったのだが、それをLINEで澄子さんに連絡すると、「蠅はマズいけど、あ、その蠅、トシオかも。お通夜の前に蠅が来て、あんまり側に纏い付くから、パチンとやろうとしたら、「いらしたのかも」って、葬儀屋さんが。」と返って来た。そうか、敏雄が銀蠅になってアメリカまで「ちゃんとやってるか?」と見に来たのだと思い、夕飯を挟んで3時間半ちゃんと仕事。夕飯には豚を焼く。豚はうまかった。この時間は日本の日中にあたるので、今後も昼は遊んで夜仕事するのがいいのかもしれないなと思う。上階からの英語を聞きながら敏雄作品を読んでいると、いつどこにいるのかわからなくなって面白い。 めんどくさくなったので、シャワーを浴びずに寝ることにする。あったかブランケットだけだと寒くて、シーツがわりに敷いていた掛け布団とブランケットをチェンジして寝る。まだ床に直にマットレスを置いて寝ている。明日はベッドを組み立てられるだろうか。






(→ベッド、組み立てられました)