2025年6月2日月曜日

074*2025.6




10句
鉛の書     関悦史

10句

10句


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高山れおな第5句集『百題稽古』が刊行されました。
詳細はこちら⇨現代短歌社




独逸四重奏曲   高山れおな


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独逸四重奏曲   高山れおな

恍惚と新玉葱や刃を濡らす
茹で潰す新じやがの雲笑ふ笑ふ
古裂帖に隠花帝国の夏を探す
俳魔の顔おほよそ独逸菖蒲(ジャーマンアイリス)
独逸牧羊犬(ジャーマンシェパード)薫風を嗅ぎ星を嗅ぐ
蜘蛛の囲や独逸卵焼(ジャーマンオムレツ)ほど静か
かたばみを踏まずに行かう独逸まで
髄菜咲くとは白き指夢に満ち
一切経蔵いやさ鏡像草いきれ
夕焼や父系天使の大系図

鉛の書      関悦史


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鉛の書      関悦史

見るうちにうねり上がるや鯉幟
   最近の文庫本 
装幀うるさく題字なめくぢより太く 
第三インターナショナル記念塔や梅雨空に
迫る火の記憶ありけり蝸牛
キーファーの鉛の書読む夏もがな
ひとりづついのちを終へて蚊遣香
永劫は俘虜の裸の背が並ぶ
夜の金魚目からビームは出さざるも
プラスチックごみ散る地球うすごろも
「花火」撃ちに撃つ犬型ロボをドローンが撃つ

午後       佐藤文香



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午後       佐藤文香

五月の御苑ここには栗鼠がゐないと言ふ
どの薔薇にも心が動かないと言ふ
目を瞑る香りの薔薇と書かれてゐて
水鳥の見えない池を見せる窓
あをかへでよりあをさぎを覗きけり
蕗の葉の厚さや青く鴉群れ
鴉たち 午後 君は恋人でない
初夏の雨木立を深く仕上げたり
光なき雨後を動きのみづすまし
蕾の紫陽花一時間後にまた会ふ