2021年5月1日土曜日

奈良漬と四天王    高山れおな



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奈良漬と四天王    高山れおな

 法隆寺三経院のほとり。歌は、
 ちとせあまりみたびめぐれるももとせを
 ひとひのごとくたてるこのたふ
八一歌碑つつじ白く赤きその中に 
 中宮寺境内。歌は、
 みほとけのあごとひぢとにあまでらの 
 あさのひかりのともしきろかも
八一歌碑春落葉より立てり読む 
 法輪寺・法起寺の方へ。
紫雲英田に塔紫雲英田に塔斑鳩は 
 當麻寺金堂四天王像は容顔に胡人の風あり。
四大王(しだいわう)いつも黄沙の夢に立つ
行く春や四天王寺史遐(とほ)し幽(くら)
轟音も雨も空より春寒し
いづこへと春の夜空の轟音は
傘さして歌ふ冠状病毒(コロナ)の穀雨には
春惜しむごと奈良漬を惜しみ喰ふ
 瀬戸夏子『白手紙紀行』
夏子氏の夏が近づく白表紙