クリックすると大きくなります
ナンパされず 佐藤文香
どの夜もこはくないなり百日紅
灯蛾集ふ店にヲッカを飲みに行かん
残暑嗚呼駝鳥の脳の小さくて
蜩や座つて本を出して読まず
そつなく柿剝き本日もナンパされず
無花果に胡椒 終はらぬ友情にすがり
旅空の星つなぎ味方を増やす
松脂のゆるみに秋の鹿の寄る
切花や橋にとどまる秋の蜂
シューズ捨つ秋の波またたく町に
クリックすると大きくなります
真紅 関悦史
ありもせぬ空進みけり水馬
滴りや山に睦みて骨や貝
一分の一地図秋の涼しさは
「汝、姦淫すべし」と船象(かたど)る白桃
純粋階段あれば昇りてくだる初秋
穴惑らに誘はれゆくも夢の旅
身の中の真紅の駅は芒かな
秋の我(われ)が世界樹として死にはじむ
秋の海無限の入水呼ぶ如し
芥浮き秋のプールとなりをはる