2025年9月1日月曜日

077*2025.9

 


10句
土地     関悦史

10句
花と夢 Ⅳ   高山れおな

10句
じゆわつと  佐藤文香


じゆわつと    佐藤文香


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じゆわつと    佐藤文香

ビール注ぐわが本名を知らぬ人に
弱冷房車情事を思ひ出し笑ひ
手持ちファンは我より若し大月行
相葉くんの重心ブレて夏の嵐
コンベアを走り汗して不惑とは
キャミで寝る熟女となりぬ多摩中部
夏休みバスセンターの地下で飲める
天麩羅の石蓴の抱く島の夏
黒糖焼酎ソーダじゆわつと舌の奥
白ゴーヤーからだつかはぬ愛もやる

土地      関悦史



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土地      関悦史

生けるまま埋めていただく目は泉
手はメロンを辞典と思ひながら切る
マスクせぬ人群がりし祭かな
籐椅子の燃えつつ人のこゑを出す
未知の古書あふるる夢の夏の暮
帰りゆく翁白蓮隠れかな
一神教の光によりて長崎忌
馬ならむ茄子から美少女フィギュアの四肢
白熱世界の仕舞ふべき墓に参りたり
花野のやうに生きけり猫を眠らしめ

花と夢 Ⅳ   高山れおな




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花と夢 Ⅳ   高山れおな

莞爾(につこり)と汗のタトゥーや羽搏てる
秋の蟬指環の如き殻残す
風穴のない葉ある葉や紅芙蓉
秋蝶の影ランタナの彩(あや)に落つ
禁煙も二百十日やハムサンド
  葵さん、文庫編集部に異動。最後に担当したのは「しゃばけ」特集。
  送別会の幹事より、花束に添へるカード用の句を徴さる。二句 
娑婆いつも青い青いはきちかうよ 
手文庫に月明の文字泳ぎ出す 
(かざ)暗き松風草を鹿は啖はず 
きちきちが飛び交ふ向かうきつと罠だ 
水犀や珊瑚樹の火を分けて出よ