2024年6月2日日曜日

062*2024.6



 

10句
百題稽古差換ノ四  高山れおな


10句
ひとつの影   佐藤文香

10句


ひとつの影      佐藤文香


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ひとつの影      佐藤文香 

夏が来るまでに目がかわいてしまふ
橋に立てば葉桜が夏中つづく
船に乗る五月は本に栞して
紫陽花や回して開ける嗅ぎ薬
耳に指入れて紫陽花寺にゐる
オレガノにギターの音が粒で触れる
ローズマリー町に気球の着くところ
ロバの気持ちはクリーム色で田水沸く
夕月も夏至を呼び出す口笛も
愛永し椋鳥の夏ひとつの影

2024年6月1日土曜日

百題稽古差換ノ五 二月分遅配  高山れおな

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百題稽古差換ノ五 二月分遅配  高山れおな

   更衣 
花は葉に人は渚にころもがへ
   夏虫 
遙かより遙かより火蛾湧き次げり
   鵜河 
水火厭はぬが夜露死苦鵜の猛り
   夏猟 
鹿首(トロフィー)の瞠れる黴の館かな
   蟬 
蟬鳴くや敵ある如く焼く如し
   残暑 
あぢさゐの残党かすむ残暑かな
   擣衣 
秋澄むやとはに消えたる遠砧
   秋風 
秋風に白髪さかだつ銀座かな
   嵐 
墨ながす野分の袖や空模様
   稲妻 
いなづまや花の都の狂ひ咲き

百題稽古差換ノ四  高山れおな


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百題稽古差換ノ四  高山れおな

   春日祭 
神の山笑ひ山山笑ひけり
   石清水臨時祭 
さして行く南まつりや縄電車
   志賀山越 
恋の山砕けし果ては霞む海
   落花 
花筏ももとせ揺れて戦前へ
   躑躅 
短歌(うた)は愚痴俳句は馬鹿や躑躅燃ゆ 
   残鶯 
鶯の口が真赤な春惜しむ 
   夏草 
草いきれいよよ魅死魔の胸毛なら
   扇 
純白の扇つかひて旅人よ
   樹陰  
ひとりづつ腋の下闇伝ひ行け 
   避暑 
破顔して太陽追ひ来(く)避暑の宿

水のむ体  関悦史


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水のむ体  関悦史

黄金週間起きて水のむ体かな
憲法記念日クッキー焼かれ燃えあがる
逆光の暮はふくよかなる蚊柱
山滴る古事記は泥のにほひかな
このところ鼻血おほくて青嵐
どくだみはわが頭蓋骨欲る如く
戦争へ降らす大量の心太
イデア界AIの美女汗ばめる
追ひかけてくるラッパーや半裸にて
冷房車内連結部を視野曲がり直る